中之島の民話
ケンムンと遊んだ子
中之島のヤルセ(現在灯台がある辺り)に人家があったころの話です。ある3歳の男の子が遊びに出たっきりもどってこない。心配した親の人は,東区の人に協力をもらって手分けして山探しを始めたそうです。しかしいくら山の中を探しても男の子はなかなか見つかりません。見つからないはずです。なんと男の子は,海岸の岩かげに行って遊んでいたのです。ヤルセの海辺は,断崖絶壁になっており,大変危険な所が多いので,普段から子供たちに崖の近くに行かないよう戒めていたそうです。それで大人たちは,そんな所に子供が遊びに行くわけないと思っていたのです。ですから,海岸に行って崖の上から崖下で遊ぶ子供を発見した時の驚きは大変なものでした。大人の人が腰に縄をつけて絶壁を下り,ようやく子供を助け出し,家に連れて帰ったそうです。家に戻った子供に母親がご飯を食べさせようとしたところ,外に遊びに行くといって,何度も何度も外に飛び出しました。人々は,あの子には,ケンムンがとりつき外へ連れだそうとしているのだとうわさしたそうです。
中之島の東区の人は,奄美からの移住者が多いです。その人たちは,妖怪のことをケンムンといいます。ケンムンがだます子供は,優秀な子供かバカな子供だといわれています。子供の時,ケンムンと遊んだ子は,非常に優れた人間になるといいます。ヤルセのその子も,大変立派な大人になったということです。


白木のジイとババ
 昔,中之島の「白木」と呼ばれる場所にジイとババが住んでいました。ある年,白木の村が飢饉になって食べるものが何にもなくなってしまいました。何日も食べ物を食べていない二人は,里村に食べ物をもらいにでかけました。なんとかいくらか食べ物をもらい,帰り道で白木近くの千尋(せんぴろ)滝のある千尋川にさしかかりました。何日も食べ物を口にしていない上に白木から里村まで歩き通しだったので,高齢のジイとババには大変きついものでした。そこでもらった食べ物を食べることにしましたが,ジイは米粒をたくさん食べ,ババにはほんのちょっとしか食べさせませんでした。そのためジイは川を渡り切りましたが,ババはつかれと空腹のため川を渡りきれず,そこで亡くなってしまったということです。それでジイの墓は,千尋川の向こうの白木の方にありますが,ババの墓は川の手前の方にあるそうです。
それからは,そこを通る人は,ジイは一人で食べ物をたくさん食べたといって,ジイの墓には花をあげず,ババの墓には春の彼岸までは薪を,秋の彼岸までは柴を,「ババさん,ババさん,薪をあげていきますから」とやさしく声をかけてあげるのだそうです。かわいそうに,ジイの墓には千尋滝の所から石を投げる人もあったので,墓石が傷だらけでずいぶんといたんでいるということです。


ホホウの島
 昔,中之島にある姑さんとお嫁さんがいっしょに住んでおりました。姑さんがお嫁さんに「おまえは,今日は山に仕事にいったら,ホホウ(フクロウ)がなかんうちは,戻ってくんな!」と,言ったそうです。仕事に山に行ったお嫁さん,ホホウが昼にないたので,昼間の早いうちから家に戻ってきたそうです。すると姑さんは,頭から角を出して「ホホウがなかんのに,なんで戻ってきたか!」と真っ赤な顔をして怒りました。お嫁さんは,「ホホウが今,ないているので,行って,聞いてみてください。」と,いったそうです。姑さんが外に出てみると,確かにホホウが「ホホウ〜,ホホウ〜」とないていました。姑さんは,なんとも言葉がなかったそうです。
それからというもの,昼間からホホウがなけば,「もう,嫁の戻いドッ(時)やが!」と,中之島の方ではいうようになったそうです。

大猫の話
 中之島のある人が白木にイザイ(夜漁)に行ったそうです。珊瑚礁の潮がひいたとき,魚を捕っていると,大変大きな猫がやってきました。怖くなって,オヅキ(ヤス)で突いたら,「ヂキー」とうなりながら,山の方へ一直線に逃げていったそうです。そのときオヅキは,猫にとられてしまいました。男は,その晩のイザイをあきらめておうちにもどりました。次の朝,海岸に行ってみると,男のオヅキは,ツンナメの木の枝にひっかかっていたそうです。
 白木には,山猫がいるという話が伝わっている。また,白木のある男は,阿弥陀様(現在は,里のトンチの上にある。)に参拝して,猫が猫を食うたビンタを見たという。また,白木の道で,「猫の千つなぎ」といって,千匹の猫が並んでいるのを見たという話も伝わっている。世の中には,不思議な話もあるものです。