Q9: |
皆既日食の時には |
A9: |
物体が大きさのある光源からの光を受けて影を作るとき、その影は、光源から直接当たる光をすべて遮ってしまう領域と、光源の一部分から発っせられた光だけが遮られてしまう領域とに分けられます。前者を本影、後者を半影といいます。
皆既日食は太陽を月が完全に隠してしまう現象ですが、太陽は大きさを持った光源として見えますから、本影と半影ができます。図で黒く塗りつぶした部分が本影、薄黒く塗りつぶした部分が半影です。本影は太陽から来るすべての光を月が遮っていますから、その中では皆既食が見られます。半影は太陽から来る光の一部しか遮られていませんから、部分食になります。 月は球形ですから、本影の形は3次元的には円錐状になります。そこで、立体形状を重視した場合、本影に含まれている空間を本影錐と呼ぶことがあります。 金環食の場合、本影は地球の上空で1点に収束してしまいますが、その続きの部分は他の半影とは太陽の見え方が違うので、ここを擬本影とよぶことがあります。本影が地表に写っている様子は、もちろん地球上からは見ることができません。望遠鏡を使えば月から見ることができるかも知れませんが、もっと地表に近い人工衛星から撮影された実例もあります。 地球の大気には埃や微粒子が多数浮遊しているので、そこを光線が通ると光の通り道が見えることがあります。レーザー光線の軌跡が暗い場所では微かに見えるのと同じです。本影の縁は光の量が格段に違うので、本影の外の光線が本影と対比をなして大気中に見えることがあります。 これは本影錐そのものが見えていることに相当します。この場合、本影の移動速度は地表を月の影が移動する速度そのものですが、しばしば時速2000km以上になります。月の移動に伴って移動するので西から東に移動することになります。皆既食が見られるということは本影の中に居るということになりますから、皆既食が見られる地点にいるということは、本影錐を見ることができるチャンスだともいえます。 ただし、本影錐は西からやってきますから、太陽が東にある午前中の日食の場合、太陽にだけ注目していると見逃してしまいます。本影は地球の位置では最大200km程度、地面に対して太陽光線が斜めに傾いているとその分大きく見えますから、直径1万2700kmもある地球に比べれば小さなものですが、地上から見ると大変大きな影になります(約、直径3400km!)。 ですから、もっとも広い範囲が同時に観測できる方法、即ち、肉眼で見るのがもっとも賢い方法です。望遠鏡や双眼鏡ではかえって見ることができません。大気中に影と光の境目が猛スピードで進んでくるという現象ですから、他のはでな現象にばかり目を奪われていると本影錐は見落とされてしまいますが、晴れているかぎり現われないことはまずありません。また、現象の性質上、太陽の高度が低いほうが影が低い空に長く伸びるので比較的気づきやすいでしょう。 |
