LIVE!ECRIPSE97


Q8:

皆飢日食の時にはダイヤモンドリングが
見えると聞きましたが、 これは何ですか?

A8:

月も太陽も肉眼では真ん丸に見えますが、実際は表面に凸凹があります。月の場合、表面重力は地球の1/6しかなく岩石でできているので、表面がかなり凸凹している上に、直径が地球の1/4程しかありません。
ですから、直径に比べて凸凹は目立ちやすくなっています。太陽の場合、表面重力が地球上の28倍もありガスでできているので、表面の凸凹ができにくいうえに、直径が地球の108倍もあります。ですから、直径に比べて凸凹は目立ちにくくなっています。
別の言い方をすると、月は地球から38万kmという比較的近い距離にあるのに、太陽は地球から1億5千万kmも離れているので、同じ大きさの凸凹があった場合には月の方が400倍も大きく見えるということになります。したがって月の方が太陽よりも遥かに縁が凸凹していることが予想されますが実際にそうなっているのです。

このように凸凹した月の縁が太陽に接触すると、たまたま谷になっている所の方が山になっている所よりも太陽を遮り始める時刻が遅くなり、太陽を遮り終わる時刻が早くなります。皆飢日食の場合、太陽が全部隠されてしまいますが、その直前や直後には、この山谷の違いが顕著に見られ、谷のところからだけ点々と太陽が見える瞬間があります。ちょうどスポットライトを鋸で辛うじて隠している状態を想像してみてください。この点々と見える様子がビーズあるいは数珠のように見えるので、このことを最初に指摘した人にちなんで「ベイリーの数珠」あるいは「ベイリービーズ」と呼びます。
古くは月に山や谷がある証拠の1つとして挙げられていました。したがって、ベイリーの数珠の見え方は、太陽と月の縁が接する瞬間の月の地形により変化します。地球から月の縁として見える場所が時期によって変わるからです。

これは、主に3つの理由によります。1つには、月が地球を回る速度や自転速度が一定でないため、月が追い越しぎみに見えるときと追い越されぎみに見えるときとがあるためです。月の前寄り(西寄り)が見えたり、後寄り(東寄り)が見えたりするのです。 2つ目には、月の自転軸が軌道面からわずかに傾いているため、 月の北極が地球から見える方向になる時と月の南極が見える方向に なる時とがあるためです。 最後に、月と地球とが比較的近いために地上の位置の違いで見える 方向がわずかに異なるためですが、これは上の2つに比べると遥かに わずかな違いです。

このように月の見える面が完全には一定していないことを「月の光学秤動」と呼びます。月の光学秤動の予報と月の地形のデータを用いて、皆飢日食の際に、月の縁がどう見えるのかは予報できます。これを、月の縁を誇張して図で示したものを、月縁図と呼びます。
第2接触や第3接触の瞬間に、接触点ちかくにたまたま大きな谷があったりすると、ベイリーの数珠がひときわ目立つことがあります。日食は円形の太陽像を円形の月の影が隠すので、この様子は、一端に宝石をつけた指輪のようにもみえます。
そこで、これをマスコミが「ダイヤモンドリング」(「ダイヤの指輪」の意)と呼ぶようになったようです。感覚的には「ベイリーの数珠」よりもよい表現だったためか今ではすっかり定着していますが、厳密に定義された科学用語ではないため、「第3接触の直後に見えたものだけをダイヤモンドリングと呼ぶ」などとこだわっている人もいるようです。

以上のことからもわかるように、ダイヤモンドリングは太陽の一部が直接見えているので、もちろん肉眼で見ることは可能ですが、直接太陽を見ていることになるのであまり見つめるのは目の健康によくありません。また、楽しみという観点からいっても、第2接触の際にダイヤモンドリングに過度に注目すると、目が明るい光に慣れてしまい、皆既食中の淡いコロナなどを見落としてしまいがちです。



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